飼い主以外の特定の人にだけ、愛犬がうれしょんをしてしまい、困惑したり、来客に申し訳なく思ったりした経験はありませんか。家族に対してならまだしも、お客様の前での出来事は、飼い主として心苦しいものです。犬が特定の人にだけうれしょんする理由は何なのか、うれしょんは愛情表現なのか、それとも犬の心理とボディランゲージが示す通り、特定の人へのうれしょん、実はストレスが原因かも?という疑問が浮かびます。来客時に大興奮する愛犬を見ると、飼い主以外へのうれしょん対策が急務だと感じることでしょう。しかし、成犬になっても治らないケースもあり、年齢と経験がうれしょんに与える影響も無視できません。中には逆効果なNG対応をしてしまうこともあります。そこでこの記事では、うれしょんされやすい人の共通点や犬への接し方のコツ、訪問者を迎える前にできるうれしょんを予防する環境づくり、そして落ち着いて挨拶を教えるトレーニング方法まで、幅広く解説します。さらに、獣医師に聞く、うれしょんと病気の見分け方にも触れ、飼い主さんの不安を解消します。
記事のポイント
- うれしょんの多様な原因(喜び、服従、ストレスなど)
- やってはいけないNG対応と正しい対処法
- 来客前にできる具体的な予防策と環境づくり
- 病気の可能性と獣医師に相談する目安
犬のうれしょん、特定の人や飼い主以外にする原因とは

- 犬が特定の人にだけうれしょんする理由
- うれしょんは愛情表現?犬の心理とボディランゲージ
- 特定の人へのうれしょん、実はストレスが原因かも?
- 成犬でも治らない?年齢がうれしょんに与える影響
- 獣医師に聞く、うれしょんと病気の見分け方
- うれしょんされやすい人の共通点と犬への接し方のコツ
犬が特定の人にだけうれしょんする理由

犬が特定の人にだけうれしょんをする背景には、単なる「喜び」だけでは説明できない、複数の心理的な要因が複雑に絡み合っています。この行動は、犬の社会的な習性や個々の感情表現の一つと捉えることができます。
一つの大きな理由として「劣位行動」としての服従心の表れが挙げられます。犬の祖先であるオオカミの群れでは、目下の個体が目上の個体に対して、自らの立場が下であることを示すために体を小さくしたり、排泄をしたりする行動が見られます。この習性が、現代の犬にも受け継がれていると考えられます。つまり、犬が「この人は自分より優位だ」と認識した相手に対し、敬意や服従の意を示すために、無意識におしっこを漏らしてしまうのです。これは、犬が心から信頼し、大好きだと感じている人に対して見られることもあれば、逆に少し威圧感を感じる相手に対して「敵意はありません」と伝えるために行う場合もあります。
また、極度の興奮も原因となります。大好きな人が訪ねてきた時、犬の感情は最高潮に達し、喜びのあまり体のコントロールが効かなくなります。特に、膀胱の筋肉がまだ発達しきっていない子犬に多く見られますが、もともと興奮しやすい性格の成犬でも起こり得ます。
一方で、喜びとは正反対の「恐怖」や「不安」が引き金になることも少なくありません。犬にとって、見知らぬ人や大きな声で話す人、急な動きをする人は脅威に感じられることがあります。そのような相手から向けられる注目や接触が、犬にとって強いストレスとなり、恐怖のあまり失禁してしまうのです。この場合、犬は体を硬直させたり、震えたりといった他のサインも同時に示していることが多くあります。
以上のことから、犬が特定の人にうれしょんをするのは、その人に対して強い感情(喜び、服従、恐怖など)を抱いている証拠であり、その感情の種類は相手との関係性や犬自身の性格によって異なると考えられます。
うれしょんは愛情表現?犬の心理とボディランゲージ

「うれしょん」という言葉の響きから、多くの飼い主はこれを単純な愛情表現だと考えがちです。もちろん、飼い主の帰宅時などに見られるうれしょんは、再会を心から喜ぶ気持ちの表れであるケースも少なくありません。しかし、この行動の裏にある犬の心理は、必ずしも喜びだけではないことを理解することが大切です。犬の心理状態をより正確に読み解くためには、その時のボディランゲージに注目する必要があります。
喜びや興奮のサイン
犬が純粋な喜びからうれしょんをしている場合、体全体で嬉しさを表現しています。尻尾を大きく振り、耳はリラックスしてやや後ろに引かれ、全身をくねらせるようにして駆け寄ってくるでしょう。表情も穏やかで、口角が上がって笑っているように見えることもあります。このような場合は、ポジティブな感情の高まりが、排尿をコントロールする筋肉の働きを上回ってしまった結果と考えられます。
服従や不安のサイン
一方で、うれしょんが服従心や不安から来ている場合、ボディランゲージは大きく異なります。犬は相手に対して体を低くし、耳をぺたんと頭につけるように倒します。尻尾は下がっているか、足の間に巻き込まれていることが多いです。相手の目を直接見ようとせず、視線を逸らしたり、お腹を見せて仰向けになったりすることもあります。これらは、相手に対して「私はあなたに逆らいません」「どうか攻撃しないでください」というメッセージを送るためのカーミングシグナル(犬が自分や相手を落ち着かせるための行動)の一種です。この場合のうれしょんは、愛情表現というよりは、相手との社会的関係における緊張やストレスの表れと解釈するのが適切です。
このように、うれしょんは愛情表現である場合もありますが、犬が感じているプレッシャーや不安のサインである可能性も十分にあります。その時の犬の耳、尻尾、姿勢、視線といったボディランゲージを総合的に観察することで、その行動の背後にある本当の気持ちを理解し、より適切な対応をとるためのヒントが得られます。
特定の人へのうれしょん、実はストレスが原因かも?

愛犬が特定の人に会った時にだけうれしょんをする場合、その行動の根本に「ストレス」が潜んでいる可能性を考慮する必要があります。犬は非常に繊細な動物であり、人間が気づかないような些細なことでもストレスを感じることがあります。喜びの表現だと見過ごされがちな行動が、実は犬からのSOSサインであるケースは少なくありません。
犬がストレスを感じる対象は様々です。例えば、声が大きく、身振り手振りが大きい人は、犬にとって予測不能で威圧的な存在に映ることがあります。また、犬に慣れていないために、ためらいがちに接してきたり、逆にぐいぐいと距離を詰めすぎたりする人も、犬を不安にさせる原因となります。さらに、過去に特定のタイプの人(例:帽子をかぶった人、特定の香水をつけている人)から嫌な経験をしたことがある場合、その記憶がトラウマとなり、似た特徴を持つ人に会うたびに強いストレス反応としてうれしょんをしてしまうことも考えられます。
ストレスが原因である場合、うれしょん以外にも以下のようなサインが見られることがあります。
- 体を掻く、舐める
- あくびを繰り返す
- 唇や鼻をぺろぺろと舐める
- 体がこわばる、震える
- その場から逃げようとする
これらのサインは、犬が「今の状況は不快だ」と感じていることを示す重要な手がかりです。もし、特定の人に対してうれしょんをすると同時に、上記のような行動が見られるのであれば、それは喜びの興奮ではなく、明らかなストレス反応と判断するのが妥当です。
このような場合、大切なのは犬を無理にその人と接触させないことです。犬が安心できる距離を保たせ、その人からおやつをもらうなど、少しずつポジティブな経験を積ませることで、「この人は怖くない」と学習させていくアプローチが有効です。犬の行動の背景にあるストレスを見抜き、その原因を丁寧に取り除いてあげることが、問題解決への第一歩となります。
成犬でも治らない?年齢と経験がうれしょんに与える影響

うれしょんは子犬期に特有の問題と思われがちですが、実際には成犬になっても続くケースは珍しくありません。年齢と経験は、うれしょんという行動に深く関わっており、治りやすさや原因も異なってきます。
子犬期のうれしょん
子犬がうれしょんをする主な原因は、身体的な未熟さと精神的な未発達にあります。生後数ヶ月の子犬は、おしっこを溜めておく膀胱の括約筋がまだ十分に発達していません。そのため、嬉しい、楽しいといった感情が少し高ぶるだけで、意図せずおしっこが漏れてしまいます。また、社会経験が浅く、感情のコントロールも苦手なため、ささいな刺激で興奮しやすいのも特徴です。子犬期のうれしょんの多くは、体の成長とともに括約筋が発達し、様々な経験を通じて感情のコントロールを学んでいく中で、自然と改善されていきます。
成犬期のうれしょん
一方、成犬になってもうれしょんが治らない場合、原因はより複雑になります。一つの可能性として、子犬の頃からの性格が影響しているケースが考えられます。もともと非常に興奮しやすい性格、怖がりな性格、あるいは飼い主への依存心が強い犬は、成犬になっても感情の起伏が激しく、うれしょんという形で表れやすい傾向があります。
また、「経験」による学習も大きく影響します。例えば、来客のたびに興奮してうれしょんをしてしまい、その際に飼い主や来客が「あらあら」と騒いだり、過剰に構ったりする経験を繰り返していると、犬は「うれしょんをすると注目してもらえる」と誤って学習してしまうことがあります。こうして行動が習慣化すると、成犬になってもなかなか治りにくくなります。
さらに、小型犬は大型犬に比べて、成犬になっても子犬のような幼い気質(幼形成熟)を保ちやすい傾向があると言われています。体が小さいため、人間に対して常に服従的な立場になりやすく、劣位行動としてのうれしょんが残りやすいとも考えられます。
このように、成犬のうれしょんは単なる身体的な問題ではなく、その犬が持つ気質やこれまでの経験が深く関わっています。改善には、行動の背景にある原因を理解し、根気強くトレーニングや環境改善に取り組むことが不可欠です。
獣医師に聞く、うれしょんと病気の見分け方

愛犬のうれしょんに悩む時、多くの飼い主が「これはただの癖なのか、それとも病気のサインなのか」という不安を抱きます。ほとんどのうれしょんは行動学的な問題ですが、中には泌尿器系や神経系の病気が隠れている可能性もゼロではありません。行動と病気を見分けるためのポイントを理解し、適切なタイミングで獣医師に相談することが大切です。
見分けるための最も重要なポイントは「状況」と「頻度」、そして「その他の症状」です。うれしょんは、飼い主の帰宅時、来客時、散歩で好きな人に会った時など、特定の興奮する、あるいは緊張する状況下で発生します。もし、愛犬が寝ている時やリラックスしている時に無意識に漏らしている、あるいは状況に関係なく常にじわじわと漏れているような場合は、病気の可能性が高まります。
以下の比較表を参考に、愛犬の様子を注意深く観察してみてください。
チェック項目 | 行動としてのうれしょん(可能性高) | 病気の可能性を考慮すべきケース |
---|---|---|
タイミング | 飼い主の帰宅時、来客時、興奮した時など特定の状況で起こる | 状況に関係なく、常に漏れている、寝ている時に漏らす |
量や頻度 | 点々とした少量から、ある程度の量まで様々だが、状況による | 急に頻度や量が増えた、常に下腹部が濡れている |
排尿の意思 | 無意識、無自覚に漏らしてしまう | 排尿のポーズをとるが少ししか出ない、または出ない |
その他の症状 | 特になし(行動は興奮または服従的) | 水を大量に飲む、食欲不振、元気がない、陰部を気にする |
もし、愛犬の症状が表の「病気の可能性を考慮すべきケース」に一つでも当てはまる、あるいは以前はしなかったのに急に始まった、何を試しても一向に改善しないといった場合には、自己判断せずに動物病院を受診することをお勧めします。
獣医師は、尿検査や血液検査、超音波検査などを用いて、膀胱炎、尿路結石、腎臓病、ホルモンの異常(避妊手術後の尿失禁など)、さらには分離不安症のような精神的な疾患の可能性を探ります。原因が病気であった場合、適切な治療によって症状が劇的に改善することもあります。愛犬の健康を守るためにも、気になるサインを見逃さず、専門家の診断を仰ぐことが賢明な判断です。
うれしょんされやすい人の共通点と犬への接し方のコツ

不思議なことに、犬がうれしょんをする相手には、ある程度の共通点が見られることがあります。これは、犬に無意識のうちにプレッシャーや過度の興奮を与えてしまう接し方が関係しています。もしあなたの友人や家族の中に、愛犬が特によくうれしょんをしてしまう人がいるなら、その人の行動にヒントが隠されているかもしれません。
うれしょんを誘発しやすい人の特徴
- 高い声で大きく騒ぐ人 「わー!かわいい!」と甲高い声で駆け寄り、犬の興奮を煽ってしまうタイプです。犬は人間の感情に敏感なため、相手の興奮が自分にも伝染し、感情のコントロールが効かなくなってしまいます。
- 真正面から近づき、頭を撫でようとする人 犬にとって、真正面から目をじっと見つめられることや、自分の頭上から手が伸びてくることは、威圧感や恐怖を感じる行動です。良かれと思ってした行動が、犬には攻撃的に受け取られ、服従や恐怖によるうれしょんを引き起こします。
- 犬のパーソナルスペースに急に踏み込む人 犬にも安心できる個人的な空間があります。挨拶もそこそこに、いきなり体を触ったり抱き上げようとしたりすると、犬は驚きとストレスを感じてしまいます。
犬に安心感を与える接し方のコツ
うれしょんを防ぎ、犬と良好な関係を築くためには、犬にプレッシャーを与えない接し方を心がけることが鍵となります。来客には、以下のポイントを事前に伝えておくと良いでしょう。
- まずは犬を無視する 家に入ったら、まずは犬に構わず、飼い主と会話を始めるなどして、犬が落ち着くのを待ちます。犬が自分から匂いを嗅ぎに来るまで、視線を合わせたり話しかけたりしないのが理想です。
- 低い姿勢でゆっくりと 犬に挨拶する時は、立ったまま見下ろすのではなく、膝を曲げて低い姿勢になり、犬の目線に近づけます。真正面ではなく、少し斜めから近づくことで、威圧感を和らげることができます。
- 犬から近づいてくるのを待つ 自分から手を伸ばすのではなく、まずは握った手などを差し出し、犬が自分から匂いを嗅ぎに来るのを待ちます。犬が安心して近づいてきたら、胸元やあごの下など、犬の視界に入る場所から優しく撫でてあげましょう。
これらのコツは、犬に「この人は安全だ」と学習させるための重要なステップです。犬が安心して人と接することができるようになれば、過度な興奮や恐怖によるうれしょんは自然と減っていくでしょう。
飼い主以外への犬のうれしょん、特定の人への対処法

- 来客時に大興奮!飼い主以外へのうれしょん対策
- 訪問者を迎える前に!うれしょんを予防する環境づくり
- 「落ち着いて挨拶」を教えるトレーニング方法
- 逆効果!うれしょんした犬に絶対やってはいけないNG対応
- 犬のうれしょん、特定の人や飼い主以外への対処まとめ
来客時に大興奮!飼い主以外へのうれしょん対策

来客は、犬にとって非日常的な刺激であり、興奮の大きな引き金となります。特に飼い主以外の人に対してうれしょんをしてしまう場合、来客時の対応を見直すことが、問題解決への最も効果的なアプローチとなります。対策の鍵は「犬を興奮させない」という一点に尽きます。
まず見直すべきは、飼い主自身の行動です。インターホンが鳴った瞬間に「はーい!」と大きな声で返事をしたり、玄関で「いらっしゃーい!」と大声で客人を迎え入れたりする行動は、犬の興奮を最大限に煽ってしまいます。飼い主が高揚すれば、犬も「何か特別なことが起こる!」と感じ取り、テンションが上がってしまうのは当然です。来客時には、飼い主自身ができるだけ冷静に、普段通りのトーンで対応することを心がけてください。
次に、犬の興奮を直接コントロールするための具体的な対策を講じます。最も有効なのは、犬が落ち着くまで徹底して「無視」をすることです。これは飼い主も来客も一貫して行う必要があります。犬が尻尾を振って飛びついてきても、視線を合わせず、話しかけず、触れずに通り過ぎます。犬が「興奮しても良いことは起きない」と学習するまで、心を鬼にして無視を貫きましょう。犬が静かになり、自分から伏せをするなど落ち着いた様子を見せたら、初めて「よし」と静かに声をかけ、優しく撫でてあげます。
さらに、日頃から「おすわり」や「まて」といった基本的なコマンドを教えておくことも非常に有効です。来客が来たタイミングでこれらのコマンドを指示し、犬の意識を興奮からコマンドの遂行へと切り替えさせます。指示に従い、静かに待つことができたら褒めてあげる、という経験を繰り返すことで、犬は興奮する代わりに落ち着いて待つことを学習していきます。
これらの対策は、一度で効果が出るものではありません。しかし、家族や訪問者の協力を得ながら根気強く続けることで、犬は次第に来客という刺激に対して冷静に対応できるようになります。興奮の連鎖を断ち切ることが、来客時のうれしょんをなくすための最も確実な道筋です。
訪問者を迎える前に!うれしょんを予防する環境づくり

犬が来客に対してうれしょんをしてしまう場合、その瞬間の対応だけでなく、訪問者を迎える前の「準備」が非常に大切になります。事前に適切な環境を整えておくことで、犬の過度な興奮を物理的に抑制し、うれしょんが起こる確率を大幅に下げることができます。
事前のトイレ
最もシンプルかつ効果的な予防策の一つが、来客の予定時刻より前に散歩に連れて行き、しっかりと排尿をさせておくことです。膀胱が空っぽの状態であれば、万が一興奮してしまっても漏れ出る尿の量を最小限に抑えることができます。これは物理的な対策として、まず初めに行うべき基本と言えます。
安心できる待機場所の確保
来客時に犬をフリーな状態にしておくと、玄関までダッシュして訪問者に飛びつくなど、興奮のスイッチが入りやすくなります。これを防ぐために、あらかじめケージやクレート、あるいはサークルの中に入れて待機させる習慣をつけましょう。犬にとってケージやクレートが「罰の場所」ではなく「安心して休める場所」になるよう、日頃からお気に入りのおもちゃや毛布を入れ、中で過ごすことをポジティブな経験として教えておくことが大切です。訪問者が到着し、場が落ち着くまでそこで待ってもらうことで、犬は興奮のピークを乗り越えることができます。
リードの活用
ケージなどがない場合や、来客に慣れさせるトレーニングの段階では、室内であってもリードを装着しておくのが有効です。リードがあることで、犬が興奮して訪問者に飛びかかろうとした際に、飼い主が物理的にコントロールすることができます。飼い主がそばにいてリードを持っているというだけで、犬に安心感を与え、行動を抑制する効果も期待できます。
来客への事前協力のお願い
訪問してくれる方にも、事情を説明し、協力を仰いでおくことが成功の鍵を握ります。家に入ってきたら、犬が落ち着くまでは「見ない・話しかけない・触らない」というルールを共有しておきましょう。犬好きな人ほど良かれと思って積極的に構おうとしてしまいますが、それが逆効果であることを丁寧に伝えることが重要です。
これらの予防策は、うれしょんという失敗を防ぐだけでなく、犬がパニックにならずに落ち着いて来客を迎えられるようになるための大切なステップです。事前の準備を徹底することで、飼い主も犬も、そして訪問者も、ストレスなく時間を過ごせるようになります。
「落ち着いて挨拶」を教えるトレーニング方法

うれしょんの根本的な解決を目指すには、その場しのぎの対策だけでなく、犬が興奮せずに落ち着いて人と挨拶ができるように教えるトレーニングが不可欠です。このトレーニングの目標は、犬に「興奮するよりも、落ち着いていた方が良いことがある」と学習させることです。根気が必要ですが、日頃から繰り返し行うことで、犬の行動は着実に変わっていきます。
ステップ1:基本的なコマンドの徹底
まず、トレーニングの土台として「おすわり」と「まて」を完璧にできるようにしておく必要があります。どんな状況でも、飼い主の指示で静かに座って待つことができるよう、おやつや褒め言葉を使いながら、繰り返し練習します。これができなければ、興奮した状態をコントロールすることは困難です。
ステップ2:飼い主との挨拶トレーニング
次に、飼い主が帰宅した際の挨拶の仕方からトレーニングを始めます。家に帰ったら、興奮して駆け寄ってくる愛犬をまずは無視します。そして、「おすわり」を指示し、犬が座って落ち着くのを待ちます。完璧に落ち着いたら、「よし」と声をかけて初めて褒めてあげましょう。この時、大げさに褒めると再び興奮させてしまうため、穏やかな声で静かに撫でる程度にします。「興奮して飛びついても無視されるが、座って待っていると褒めてもらえる」というルールを犬に教え込みます。
ステップ3:協力者との実践トレーニング
飼い主とのトレーニングで落ち着いて挨拶ができるようになったら、次は家族や親しい友人など、事情を理解してくれる協力者を得て実践トレーニングに移ります。
- リードをつける:万が一の時にコントロールできるよう、室内でリードをつけます。
- 来客に協力を依頼:協力者には、家に入っても犬を無視してもらうようにお願いしておきます。
- コマンドで待機:協力者が入室したら、飼い主は犬に「おすわり」「まて」を指示します。
- 距離を保って挨拶:犬が落ち着いて待てていれば、協力者にゆっくりと近づいてもらいます。犬が立ち上がったり興奮したりしそうになったら、協力者にはすぐに離れてもらい、犬が再び落ち着くまで待ちます。
- 成功したらご褒美:犬が座ったまま落ち着いて挨拶(匂いを嗅ぐなど)ができたら、飼い主がすかさず褒め、ご褒美のおやつを与えます。
このトレーニングは、犬が失敗しないように、非常に簡単なレベルから始めることが成功の秘訣です。最初は数秒待てれば十分です。少しずつ時間を延ばし、難易度を上げていくことで、犬は自信を持って落ち着いた行動を選択できるようになります。
逆効果!うれしょんした犬に絶対やってはいけないNG対応

愛犬が目の前で、特に来客の前でうれしょんをしてしまうと、飼い主はつい焦ってしまい、誤った対応をとってしまいがちです。しかし、良かれと思ってした行動が、実はうれしょんを悪化させたり、犬との信頼関係を損ねたりする「逆効果なNG対応」であるケースは少なくありません。ここでは、絶対に避けるべき対応を解説します。
NG対応1:大きな声で叱る・怒る
最もやってはいけない対応が、うれしょんをした犬を大声で叱ることです。前述の通り、犬のうれしょんは意図的な粗相ではなく、興奮や服従、恐怖といった感情からくる無意識の生理現象です。犬はなぜ叱られているのかを理解できず、ただ「この人(飼い主)は怖い」と感じるだけです。特に、服従心や恐怖心からうれしょんをしている場合、叱られることでさらに強いプレッシャーを感じ、症状は悪化の一途をたどるでしょう。飼い主に対する不信感や恐怖心を植え付けてしまい、他の問題行動の引き金になる可能性すらあります。
NG対応2:過剰に騒ぎ立てる
「あー!またやっちゃった!」「どうしよう、ごめんなさい!」などと、飼い主や周りの人が大騒ぎするのもNGです。犬は飼い主の反応を非常によく見ています。騒ぐことで自分に注目が集まると、「おしっこを漏らすと、みんなが構ってくれる」と誤って学習してしまう可能性があります。犬にとって、たとえネガティブな反応であっても、飼い主からの注目は一種のご褒美になり得るのです。この誤学習が、うれしょんを常習化させる原因となります。
NG対応3:すぐに抱き上げる・慰める
うれしょんをしてしまった犬を可哀想に思い、すぐに抱き上げて「大丈夫だよ」と慰めるのも避けるべきです。この行動も、犬から見れば「うれしょんをしたら抱っこしてもらえた」という成功体験になり、行動を強化(肯定)してしまうことになります。
正しい対応とは
うれしょんが起きてしまった時の最善の対応は、「無言・無表情で、淡々と片付ける」ことです。犬には一切注目せず、関心を示さない態度を貫きます。これにより、犬は「うれしょんをしても、何も良いことは起きないし、悪いことも起きない(注目されない)」と学びます。失敗を責めず、かといって過剰に反応もしない。この冷静で一貫した態度こそが、うれしょんという行動をなくしていくための正しい一歩なのです。
犬のうれしょん、特定の人や飼い主以外への対処まとめ
- 犬のうれしょんは単なる喜びだけでなく服従や恐怖のサインでもある
- 特定の人へのうれしょんはその人への強い感情の表れ
- ボディランゲージ(耳、尻尾、姿勢)で犬の心理を読むことが大切
- 大きな声や急な動きをする人は犬にストレスを与えやすい
- 子犬のうれしょんは成長と共に改善されることが多い
- 成犬で治らない場合は性格や過去の経験が習慣化している可能性がある
- 状況に関係なく漏らす、他の症状がある場合は病気の可能性を疑う
- うれしょんを叱ることは恐怖心を煽り逆効果になるため絶対に避ける
- 騒いだり過剰に構ったりすると犬が注目されていると誤解する
- 失敗した際は無言・無表情で淡々と片付けるのが最善の対応
- 対策の基本は犬を過度に興奮させないこと
- 飼い主自身が来客時に冷静に行動することが第一歩
- 犬が落ち着くまで無視を徹底し、静かになったら褒める
- 来客前にはトイレを済ませ、ケージやリードで行動を管理する
- 「おすわり」「まて」のコマンドで興奮をコントロールする練習が有効



